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番長が旅した37ヵ国の旅行記など。ほとんど一人旅。3年半のイギリス滞在を終え、2010年2月に日本に帰ってきました。


by bancho55a

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07.9- イギリス生活 UK
10.1-2 モロッコ・エジプト
09.12 ハンガリー
09.11 トルコ・ギリシャ
09.3 ダブリン
08.12 プラハ
08.11 クロアチア
08.10 リヨン
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08.6 アムステルダム
08.6 バルセロナ Barcelona
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05.11 イギリス UK
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されど仕事

日曜日の午後、キッチンで1週間分の料理を作っていると(←なまけものの番長)、誰かが帰宅した音がした。見ると、ハウスメイトのディオン。この家にディオンは2人いるけど、番長と同じフロアに住んでいる、ヒューバートの奥さんの方です。

黄色系でまとめたスーツに、アスコットの競馬場にも行けそうな、おしゃれな帽子をかぶっている。(アスコットの競馬は、エリザベス女王も出席する上流階級の社交場で、特に帽子のおしゃれで有名です。)日焼けした肌に黄色がとても似合っているので、「まあ素敵ね!」と言うと、「教会に行ってたのよ」とのこと。

番長の新しい仕事はどう?と聞かれ、覚える事がたくさんあって大変だけど、でも大丈夫、と答える。そういえば、ディオンの仕事の話を詳しく聞いたことがなかったな、と思い、その話になった。

老人介護施設で介護士として働いているディオン。「うちから歩いて25分なの。ストレッタム・コモンを横切って仕事場に向かうのよ。」と言う。あの公園が通勤路とはうらやましい^^

番「仕事は何時から何時まで?」
デ「朝8時から夜8時の12時間労働よ。変則シフト制で、夜シフトの時は夜8時から朝8時。」

体力的に相当きついし、忙しいはず。家にいる時も、歩き方から料理の仕方、掃除の仕方までとてもテキパキしているディオン。でもその態度には、とても温かみがある。

番「大変ね・・・。それに介護の仕事はストレスが多いんじゃない?」
デ「ええ、大変よ・・・。私が介護する人達は痴呆症なの。昔の事、家族の事、何も覚えてないのよ・・・。ひどい事を言われるし、態度も荒々しいの。私につかみかかってくるの!ひっかくの!それはもう大変。ストレスだわ・・・」

ディオンの笑顔が曇り、吐き出すように仕事の辛さをしゃべる。言葉に勢いがあって、ちょっと怖いほどだ。少し圧倒されて、何と言葉を返してよいか詰まってしまう。大変ね、シフト制だと土日もあまり休めないでしょ?と聞くと、

デ「本当は今週の土日は、久し振りに2日ともお休みのはずだったの。でも、水曜日に研修が入って、シフトを変わってくれる人を探したら、その人の仕事が土曜日だったのよ・・・だから土曜日も仕事になっちゃったわ。」
番「そうなんだ・・・研修って、何の?」
デ「介護のね。痴呆症の人への接し方とか。お金もかかるのよ。」
番「介護施設は研修費用を出してくれないの?」
デ「まさか!彼らは本当にケチなのよ。自腹で行かないといけないの。」

なんだかとても理不尽な話だ。少し立ち入った内容かな?と思いつつ、

番「ディオン、仕事を変えようと思ったことは無いの?」
デ「もちろんあるわ!私、ジャマイカにいた時は、お針子さんだったのよ。ドレスを縫っていたの。もしジャマイカに戻ったら、またあの仕事をするかもね。」

この、「ドレスを縫っていた」というところで、やっとディオンの顔が少し明るくなって、笑みが出てきた。でもすぐ消えてしまったけど。

デ「でも、ロンドンでは仕事がなかったの。だから介護施設に・・・。せめて病院で働きたいわ。でもそれも狭き門なのよ。」
番「そうなんだ・・・。つらいわね・・・。でもあなたの仕事は大切な仕事だと思うわ。」
デ「ええ、そうなの、大切な仕事なのよ・・・。」
番「今すぐ病院の仕事につけなくても、辛くても今のところで働いていれば、次の職を探す時に経験として評価されるわね。」
デ「そう、経験は大切だもの。」

何かもっと、ディオンの気分を明るくしてあげられる言葉がないか、と思うのだが、とっさには思いつかなかった。結局、ディオンだってよく分かっている内容のコメントしかできない自分が歯がゆい。

でも、ディオンとヒューバートが、この先、ジャマイカに戻る事はあるのかしら・・・?2人とも、ロンドンに来てから数十年たつ。今は必死に働いてお金を貯めて、老後に戻ろうと思っているのかな?先日、お兄さんがジャマイカで亡くなり、急いで帰国していたヒューバート。家族の事も心配だろうに・・・。

ディオンはそのままテキパキと料理にとりかかり、なんとまた番長にお皿いっぱいのジャマイカご飯を分けてくれた!(しかもこないだの量の1.5倍も!)ぼけりんさんが来た時、ジャマイカ料理がすごくいい匂いだったって言ってたよ、と言うと、嬉しそうに「まあそうなの!?彼女にはあげられなくて残念だったわね・・・」と言う。すいませんぼけりんさん、ぼけりんさんの分まで美味しく頂きました^^

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

数日前、新しい会社の同僚DさんとHさんとトスカを観に行ったとき、上演前にワインを飲みながら話をしたのだが、そこで、番長が人権を勉強していたという話から、世界の貧困問題の話などになった。そしてイギリス人のDさんが、日本語でとつとつと話したことも印象的だった。

「ワタシネ、本当はそういうNGOとかでシゴトしたかったネ。だから、今のシゴト始めて少しして、ドウシヨー、て思ったヨ。あまり、××のためのシゴト、したくないネ。ワタシ、困ってネ、クリスチャンだからサ、神様といっぱい話したヨ。いっぱい話したら、神様、イインダヨ、って言ったネ。××のためでもあるけど、○○のためでもあるから、ってネ。ダカラ、今はダイジョブ。」

番長も、この仕事をするようになったのは、特に好きだから、というわけではない。最大の理由は、この仕事しかオファーが来なかったから、だし、まあ、この業界は初めてだから、今後のためにも良い経験になるだろう、くらいにしか思わなかった。そういえば、昔はこの業界の仕事は興味ゼロだったなぁ・・・。その後、プライベートでこの仕事関係のことをやり始めたので、今は案外興味を持ってやれている。昼休みに、席でサンドイッチ食べながら、仕事の資料を読んでいるのも苦にはならない。むしろ、世界の情勢が分かって面白いとさえ思う。

それでも、Dさんの葛藤はよく分かる。私も、半年間の限定の仕事だから(あ、しつこく・・・まだ本決まりじゃないけど・・・^^;)、仕事に対する思い入れも浅いけど、Dさんのように正社員として働くのであれば、悩むかもな、とは何となく思う。

たかが仕事、されど仕事。イギリス人を始め、一般的に日本以外の外国人にとって、仕事とはお金を得る手段、と割り切っているんだろうと思ってたけど、一日の3分の1の時間を占める仕事、割り切れないこともたくさんあるよな・・・と、何だか切なくなってしまった。
by bancho55a | 2009-07-19 00:00 | 07.9- イギリス生活 UK